1-A-2【経営・組織論】経営管理とは
① 経営管理とは
経営管理とは、組織が目標を達成するために、限られた資源(ひと・もの・かね・情報)を効率的かつ効果的に活用する活動を指します。具体的には、経営目標の設定からその実現に向けたプロセスの計画・実行・評価・改善を繰り返し行います。
経営管理の目的
経営管理の主な目的は以下の通りです:
- 財務・資産の効率的な管理
- 人事および情報管理による組織力の強化
- 業務プロセスの改善と最適化
また、これらを実現するために、以下の手法や考え方が重要となります:
- PDCA(Plan-Do-Check-Act)
- Plan(計画):目標を設定し、達成するための具体的な計画を立てます。必要な資源やスケジュールを明確にします。
- Do(実行):計画に基づいて業務を実施し、プロセスを運用します。この段階では計画通りに進行しているかを注意深く観察します。
- Check(評価):実行結果を評価し、計画とのギャップや問題点を分析します。データを収集し、効果を測定します。
- Act(改善):評価結果に基づき、プロセスや計画を改善します。次のサイクルに向けて修正点を反映させ、継続的な向上を目指します。
- OODAループ(Observe-Orient-Decide-Act)
- Observe(観察):現状や環境の変化を迅速かつ正確に把握します。情報収集と状況認識が重要です。
- Orient(方向決定):観察した情報を基に、状況を分析し、戦略的な方向性を決定します。文化や経験も影響します。
- Decide(意思決定):最適な行動方針を選択し、具体的な意思決定を行います。迅速かつ柔軟な判断が求められます。
- Act(行動):決定した行動を実行に移します。その結果を再度観察し、ループを継続させることで、迅速な対応と適応を実現します。
- BCP(Business Continuity Plan)
- 企業が災害や緊急事態に直面した際に、重要な業務を中断なく継続するための具体的な計画です。事業影響分析(BIA)を通じて、重要業務や資源を特定し、復旧優先順位を設定します。
- 緊急対応手順や代替施設の確保、通信手段の確保など、具体的な対応策を詳細に策定します。定期的な訓練やシミュレーションを行い、計画の有効性を確認し、必要に応じて見直しを行います。
- BCM(Business Continuity Management)
- BCPを含む事業継続に関する全体的な管理プロセスで、組織全体で事業継続能力を維持・向上させる枠組みです。リスクアセスメントや事業影響分析を通じて、潜在的な脅威を特定・評価し、対応策を講じます。
- BCPの策定・実施・維持・改善を継続的に行い、組織のレジリエンスを高めます。組織内の各部門や関係者との連携を強化し、緊急時におけるスムーズな対応を可能にします。
- リスクアセスメント
- 組織が直面する潜在的なリスクを体系的に特定し、分析・評価するプロセスです。リスクの発生確率と影響度を評価し、優先順位を付けます。
- 特定されたリスクに対する対応策(回避、軽減、移転、受容)を検討・策定します。定期的にリスクアセスメントを実施し、環境や状況の変化に応じてリスク管理を更新・改善します。
② ヒューマンリソースマネジメント
ヒューマンリソースマネジメント(HRM:Human Resource Management)は、経営管理において最も重要な要素の1つです。組織の目標達成には、人的資源の適切な活用が欠かせません。
経営管理におけるHRMの重要性
HRMの重要性は以下の観点で説明されます
- モチベーションやワークエンゲージメントを高める仕組み作り
- リーダーシップの発揮によるチーム全体の生産性向上
- 多様な働き方への対応
具体的なHRMの手法や施策
- コーチング・メンタリング:従業員の成長を促す支援手法
- コーチング
- 目的:従業員が自身の目標を明確にし、達成するための能力を引き出すこと。
- 方法:コーチが質問やフィードバックを通じて、従業員が自己解決能力を高める支援を行います。具体的な課題に対する解決策を共に考えます。
- 効果:自己認識の向上、目標達成力の強化、モチベーションの向上。
- メンタリング
- 目的:長期的なキャリア成長や職場での適応を支援すること。
- 方法:経験豊富なメンターがメンティーに対してアドバイスや指導を行い、知識や経験を共有します。定期的な面談や相談を通じて関係を築きます。
- 効果:キャリアパスの明確化、スキルの向上、職場での信頼関係の強化。
- OJT(On-the-Job Training)・Off-JT(Off-the-Job Training):職場内外でのトレーニング手法
- OJT(職場内訓練)
- 目的:実際の業務を通じて必要なスキルや知識を習得させること。
- 方法:先輩社員や上司が直接指導し、日常業務の中で実践的なトレーニングを行います。具体的な業務プロセスや技術を学びます。
- 効果:即戦力となる実務能力の向上、業務理解の深化、チームワークの強化。
- Off-JT(職場外訓練)
- 目的:専門的な知識や新しいスキルを体系的に習得させること。
- 方法:セミナー、研修コース、ワークショップ、オンライン講座など、職場外で実施される教育プログラムに参加します。
- 効果:幅広い知識の獲得、最新トレンドの理解、ソフトスキル(コミュニケーション、リーダーシップなど)の向上。
- リスキリング:新たなスキルを習得させる施策
- 定義:従業員が現在の職務から新しい職務に移行するため、または技術革新に対応するために新しいスキルや知識を習得するプロセス。
- 目的:市場や技術の変化に対応し、組織の競争力を維持・向上させること。
- 方法:社内外の研修プログラム、オンラインコース、実務プロジェクトへの参加など、多様な学習機会を提供します。
- 効果:従業員の市場価値の向上、業務の多様化への対応、組織全体の柔軟性と革新力の強化。
- e-ラーニング・アダプティブラーニング:個々のスキルや進捗に合わせた学習の提供
- e-ラーニング
- 定義:インターネットを活用したオンライン学習プログラム。
- 目的:時間や場所に制約されず、効率的に学習を進めること。
- 方法:ビデオ講座、オンラインテスト、インタラクティブな教材などを通じて、自主的に学習を進めます。
- 効果:学習の柔軟性向上、コスト削減、幅広いコンテンツへのアクセス。
- アダプティブラーニング
- 定義:学習者のスキルや理解度に応じて、学習内容や難易度を自動的に調整するシステム。
- 目的:個々の学習ニーズに最適化された効果的な学習体験を提供すること。
- 方法:AIやデータ分析を活用し、学習者の進捗やパフォーマンスに基づいてコンテンツをカスタマイズします。
- 効果:学習効率の向上、個別最適化による理解度の深まり、学習意欲の維持。
- CDP(Career Development Program):従業員のキャリア設計支援
- 定義:従業員一人ひとりのキャリア目標に基づき、計画的にキャリアパスを設計・支援するプログラム。
- 目的:従業員の長期的な成長を支援し、組織への定着とモチベーション向上を図ること。
- 内容
- キャリアカウンセリング:従業員の目標や希望を理解し、適切なキャリアパスを提案します。
- スキル開発計画:必要なスキルや資格の取得支援、研修プログラムの提供。
- 昇進・異動の機会提供:キャリア目標に沿った昇進や部署異動の機会を設けます。
- メンタリング・コーチングの活用:経験豊富な社員や専門のコーチによるサポートを提供します。
- 効果:従業員のキャリア満足度向上、組織内での人材育成、離職率の低下、組織全体のパフォーマンス向上。
HRMの最新トレンド
- HRTech:テクノロジーを活用した人事管理の効率化
HRTechは、人事業務に最新のテクノロジーやソフトウェアを導入して、採用、勤怠管理、給与計算などを自動化・効率化する取り組みです。これにより、人事担当者は戦略的な業務に集中でき、組織全体の生産性が向上します。 - タレントマネジメント:従業員の才能やスキルを最大限に引き出す仕組み
タレントマネジメントは、従業員一人ひとりの才能やスキルを効果的に活用し、組織の目標達成を支援する方法です。採用から育成、評価までを一貫して管理することで、従業員の成長と組織の競争力を高めます。 - リテンション:優秀な人材の定着を図る施策
リテンションは、優秀な従業員が長く組織に留まるようにするための戦略です。競争力のある給与や福利厚生、キャリア成長の機会を提供することで、従業員の満足度と忠誠心を高め、離職率を低下させます。
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- DE&I(Diversity, Equity & Inclusion):多様性、公平性、包括性の実現
DE&Iは、多様な背景を持つ人々が公平に扱われ、誰もが安心して働ける環境を作る取り組みです。多様性を尊重し、公平な機会を提供することで、創造性やイノベーションを促進し、組織のパフォーマンスを向上させます。 - リスキリング
リスキリングは、従業員が新しいスキルや知識を習得し、変化する業務や技術に対応できるようにする取り組みです。これにより、従業員の市場価値が向上し、組織も柔軟に対応できる人材を確保できます。
リーダーシップの在り方
現代の組織では、状況に応じたリーダーシップが求められます:
- コンティンジェンシー理論:状況に応じた柔軟なリーダーシップ
- シェアードリーダーシップ:チーム全員がリーダーシップを分担
- サーバントリーダーシップ:リーダーが従業員を支える形で組織の目標達成を支援
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多様な働き方と経営管理上の留意点
テレワークをはじめとする多様な働き方への対応が、企業経営の鍵となっています。具体例として、以下の種類のテレワークがあります:
- 在宅勤務
- モバイルワーク(移動中に作業を行う)
- サテライトオフィス勤務(本社以外のオフィスで働く)
- ワーケーション(休暇先で働く)
経営上の留意点
- 労務管理の困難さ:従業員の就労時間や成果を適切に把握する必要があります。
- メンタルヘルス:リモートワークの孤独感やストレスを軽減する施策が求められます。
- ワークライフバランス:従業員が仕事と生活を両立できる環境づくりが重要です。
まとめ
経営管理は、組織目標を達成するための包括的な取り組みであり、特にヒューマンリソースマネジメントはその中核を担います。多様な働き方や変化する社会環境に対応するために、適切な管理フレームワークと人材育成施策を実践することが、持続可能な経営の鍵となります。