システム導入の流れ

第6章 システム導入

システム導入の流れ

システムを導入するときは、発注者と開発者の2人または2つの組織以上のステークホルダーが存在する。発注側と開発側で契約を結んだり、開発に関する会議を進める上で1つのガイドラインとなるのが共通フレームである。システム導入の流れを理解し、円滑にシステムを導入しよう。

発注と開発

 自社のリソースを利用してシステムを開発できれば問題ありません。しかし、より高度なシステムを開発するために専門的な知見のあるメンバーが必要な時は、開発をベンダーに依頼することがあります。

 システムを開発したい側は発注側と言われ、システムベンダーに開発依頼を出します。システム開発が開始される前までに、発注側は下記のような工程を踏みます。

① 情報提供依頼書の提示

 最新のシステム開発における全般情報の提示を発注側がベンダーに依頼する。その際に、情報提供依頼書を文書として提示することが多い。

 情報提供依頼書はRFI(Request For Information)と呼ばれ、事前に技術・経験的な観点から導入予定のシステムが実現可能かを確認する目的がある。

② 提案依頼書の提示

 システム開発における予算や期間などの諸条件を記載した提案依頼書をシステムベンダーに提出する。提案依頼書をRFP(Request For Proposal)という。

③ 提案書の受け取り

 ベンダ側は発注側に、提案書を提示する。

④見積書の受け取り

 提案の内容を発注側が承認したら、システムの運用と保守にかかるコストをベンダ側が見積書にまとめて発注側に提示する。

⑤ システムベンダの選定

 発注側は、提案と見積もりの両方の内容を確認してから、正式に発注するシステムベンダを決定する。

ベンダー:Vender:は開発者を意味する英単語で、IT業界ではシステム設計をもとにプログラム言語を使ってコーディングを実施するメンバー/人/企業を指す言葉である。

RFP:RFPとは、Request for Proposalの略で、提案依頼書を意味します。システム企画の分野の発注/調達の基本的な流れの1つとして出題される。



共通フレーム

 共通フレームとは、ソフトウェア開発の企画から開発、運用、保守、廃棄に至るまでのソフトウェアライフサイクルプロセスで、必要な作業や各ステークホルダの役割を規定したガイドラインのこと。

 ITパスポート試験では、ソフトウェアライフサイクルプロセスをSLCPと表記することがあります。システムライフサイクルプロセスもSLCPですが、本番の試験でSLCPが問題文に現れたら、ほぼ100%ソフトウェアライフサイクルプロセスを指していると考えてよいです。

ソフトウェアライフサイクルプロセス:共通フレームでは、ソフトウェアライフサイクルプロセスは企画、要件定義、開発、運用、保守の5つのプロセスに分かれます。


システム導入の流れ

 共通フレームとは、ソフトウェア開発の企画から開発、運用、保守、廃棄に至るまでのソフトウェアライフサイクルで、必要な作業や各ステークホルダの役割を規定したガイドラインのこと。

●企画

 発注元の企業のニーズや課題を分析して、解決のための新しい業務の全体像の構想を立案します。システム開発はIT投資となります。そのため、投資対効果がどれだけ見込めるのかを定量的に表す必要があります。

●要件定義

 要件定義とは、システム開発の初期に行われる工程の1つで、発注者側の利用者視点の要件をもとに、ベンダーが開発側の視点でシステム開発の詳細を定義していく。開発するシステムに対するクライアントからの要望をヒアリングして、必要とする機能や性能、システムの構成要素やUI/UXを明確にすることが求められる。ユーザインタフェースなどの機能を明らかにすることを機能要件定義といい、システムの処理性能や信頼性などの機能以外を明らかにすることを非機能要件定義という。

●設計

 要件定義工程では、ステークホルダのニーズ、要望、課題を分析し、システムに求められるものを明確にする。開発システムの細かい機能/非機能要件について、ステークホルダから同意してもらう必要がある。

 要件定義工程で定義した項目をもとに、システム全体の設計を行うのがシステム設計である。各要件をシステム開発工程で実現可能なのか、またはリスクを考慮して予備案を作成したり、考慮するべきことが多いのがシステム設計工程である。

●開発
 システム設計工程で作成された設計書をもとにプログラミングを行い、ソフトウェアを作成する。プログラミングとは、コンピュータに命令を処理させるプログラムを記述すること。記述する作業をコーディングという。

●運用・保守
 システムを運用する際は、運用するための支援者が必要な場合が多い。例えば、モバイルアプリケーションを開発しても、アプリ自体にバグや障害が発生する可能性があるため、アプリを監視/管理するためのリソースが必要になる。

 利用者に新たなニーズが生まれた時や、法律が改正された場合などは、利用者に向けて再開発作業が必要な場合もある。


■■■ 3つの要件定義 ■■■

 ITパスポート試験では3つの要件定義が出てきます。共通フレームでは3種類紹介されているからです。

種類 意味
要件定義プロセス 共通フレームの5つのプロセスのうちの1つ。要件定義プロセスでは、主に業務要件を定義する。
システム要件定義 開発プロセスのうちの1工程。業務要件のうちシステム要件を定義する。
ソフトウェア要件定義 開発プロセスのうちの1工程。システム要件のうちのソフトウェア要件を定義する。
完了して続く